一度 EVERGOODS のデイパックを手にしてしまうと、二度と他のプロダクトを使うことはできなくなる。とりわけ同ブランドを代表する "CPL" 、すなわち Civic Panel Loader は、それほどまでに完成度の高い EDC バックパックだ。
私は、長らく初代 CPL24 をコミューターバックパックとして使用してきた。
どこでどのようにして出会ったのかは忘れてしまったが、 CHZ がリリースされるより先に CPL を手にしていたことは覚えているので、2018年か2019年のことだろう。ブランドが本格的にローンチされたのが2017年であることを考えると、特に日本市場においてはアーリーアダプターと表現して差し支えないユーザーの一人であったと思う。
CPL は、何よりデザインが良かった。これ以上なくシンプルなスクエアシェイプとオールブラックのテキスタイルは、ナイロン然とした安っぽい光沢感がなく、マットな質感と十分な厚みを感じさせる表情を有している。不要な装飾やカタログスペックの為の無意味なギミックはその一切を排し、ブランドのロゴですら極めて控えめなベルクロパッチで表現するに留めている。ブランドを知らない者からすれば、それがロゴであることすら分からないだろう。
徹底的に控えめで、実用的であることに徹し、本質的に "良いもの" 、また "美しいもの" であろうとするデザイナーの強い意志が感じられた。
初代 CPL の構造はシンプルだった。背面側に独立した PC スリーブ、メインコンパートメントは 270° ジッパーで開閉するクラムシェル、内部にはドキュメントスリーブと大小ジッパーポケットが各 1 、フロントにジッパーポケットが 1 。何かと持ち運ぶガジェット類が増えた昨今のビジネスシーンには、細々としたアイテムを整理して収納するという観点から難が無い訳ではなかったが、元より荷物の少ない私には大した問題ではなかった。
そして 2020 年。CPL は、突如として "v2" へとアップデートを遂げる。ショルダーハーネスのヨーク部分に小型ポケットが追加され、フロントポケットには 3 スロットのオーガナイザーが、PC スリーブにはディバイダーが装備された。そしてオリジナルサイズである 24L よりも一回り大きな 28L モデルが追加された。初代 CPL24 ユーザーからすればそのどれもが CPL24 の微妙なペインを完璧に取除く素晴らしいアップデートであり、私自身も大いに唆られた。
​​​​​​​​​​​​​しかしながら、長期的な使用に耐えることを目指して設計されているバックパックを、そのアップデートを理由に買い換えるのも憚られ、結果的にメインジッパーが破損するまで使いきる結果となった。そして初代 CPL24 が寿命を迎えた先日、ようやく "v2" を手に入れるに至った訳だ。
v2 を購入するに当たっては、日々のデイリーコミューターとしてだけでなく、1 泊から 2 泊程度までの出張や週末の旅行にも持ち出せるよう 28L のサイズを選択した。通勤時にはやや大きさを感じるボリュームとなったが、小出張の為にわざわざもうひとつトラベルバッグを用意して中身を移し替える煩雑さを考えれば十分に許容できるストレスだ。
厳密には、ブランド本国では既に追加のアップデートが施され、メインファブリックの変更と背面の通気パネル化が図られているのだが、私個人としては例え汚れが付着しやすくともコットンライクな初期ファブリックのテクスチャが気に入っているし、そのファブリックが部位を問わず一貫してバックパック全体を構成しているシンプルさも好みであるため、このタイミングで "v2" を入手できたことを嬉しく思っている。
まだまだブランドとしては日本市場における広範な認知を獲得するに至っていない EVERGOODS だが、そのプロダクトデザインに対する頑固なまでの意志と哲学は、大きな可能性を有するものとして評価に値するだろう。今後の更なる展開の拡大に期待したい。